原油安とCDO 2015 1 12
原油安については、いろいろなことが言われています。
サウジアラビアが原油安を放置するのは、
アメリカと協力して、
原油大国のロシアやイランを窮地に追いやるためとか、
いや、シェールオイル産業をつぶすためとか、
いろいろな噂があります。
しかし、金融関係者が懸念しているのは、CDOの存在です。
CDOとは、債務担保証券のことで、ABS(資産担保証券)の一種です。
一言で説明するのは難しいので、
金融工学によって組成された各種債権の「入れ物」と言えばわかりやすいでしょうか。
詳しくは、「CDO 2008 11 2」を読んでください。
シェールオイル企業も、
事業資金を調達するために、社債を発行しているはずで、
社債を発行しているとなると、CDOも組成されたはずです。
何年か前のサブプライム危機の時は、
CDOの存在が大きな問題となりました。
あの時は、CDOは、想定外の急激な変化に弱いのではないかと言われました。
「フィレンツェよ。
成り上がり者と、にわか成金どもが、
おまえの中に傲岸不遜の風を生み出し、
そのために、おまえは嘆き苦しんでいる」
(ダンテ 「神曲」 地獄編)
CDO 2008 11 2
今でも、よく聞かれることは、こうことです。
「サブプライム危機と言うけれど、
要するに住宅ローンが不良債権化しただけではないか。
そんなこと、どこの国でも、よくあることだ。
それが、なぜ、アメリカ経済を揺さぶり、
それどころか、世界経済にも激震を引き起こしているのか」
これは、CDOという存在が、問題を大きくしてしまったと思います。
単に、住宅ローン(サブプライムローン)を証券化して、
売りさばいただけならば、そんなに問題は大きくならなかったはずです。
CDOとは、債務担保証券のことで、
これは、各種債権の寄せ集めのようなものです。
その債権の中には、サブプライムローンをはじめとして、
様々な債権が含まれていたのです。
「寄せ集め」と書きましたが、ちゃんとした債権もあれば、
在庫処分のような債権も入っていたのかもしれません。
こうした多数の債権の入れ物のようなものが、CDOと言えるかもしれません。
ただし、中身は、高度な金融工学によって加工されていますので、
素人から見れば、まるでブラックボックスのように見えるでしょう。
これを、口の悪い人は、
「ゴミ箱に、CDOという名前をつけて売っていたようなものだ」と言っています。
そんな話をよく聞きますが、あまりにも下品な「たとえ話」だと思います。
CDOとは、上品な「たとえ話」をすれば、
日本の正月に販売される「福袋」に似ていると思います。
「福袋」とは、いろいろな商品を詰め込んだ大きな袋を、
小売店が、正月の初売りに売り出すもので、
袋の中身を見ることができません。
袋の中に何が入っているか、わからないです。
もちろん、おもちゃ売り場の福袋ならば、「おもちゃ」が入っていますが、
どういう種類の「おもちゃ」が入っているか、わからないのです。
それを、消費者が、1万円や2万円の大金で買うのです。
この福袋に何を入れるかは、小売店の裁量です。
年末商戦で売れ残った商品を入れるか。
それとも、新商品を入れるか。
あるいは、ヒット商品を入れるか。
さて、買ってしまった福袋は、流動性が低いと思います。
誰かが買った福袋を、誰かに売ろうとしても、値が付かないと思います。
買う方にしてみれば、福袋には、
何が入っているか、わからないという不安感があります。
もしかすると、ブランド品ばかりかもしれませんし、
もしかすると、売れ残りが入っているかもしれません。
だから、Aさんが「これは、2万円で買った福袋だ」と言っても、
Bさんとしては、「1万円、いや5千円でないと、買う気がしない」と思うでしょう。
このように、福袋というものは、
新品市場では、高値がついても、中古市場は、買い叩かれるのです。
これで、なんとなく、CDOという金融商品がわかったでしょうか。
こうしたCDOを、金融機関は、大量に買っていたと思います。
(注意)
単純な人は、このような文章を読むと、反米感情を抱く人がいますが、
これは、大きな誤解です。
平均的なアメリカ人は、お人よしで、正義感があり、気さくです。
ウォール街という特殊な人種と、平均的なアメリカ人を混同しないでください。
金融業 2008 10 18
「フィレンツェよ。
成り上がり者と、にわか成金どもが、
おまえの中に傲岸不遜の風を生み出し、
そのために、おまえは嘆き苦しんでいる」
(ダンテ「神曲」地獄編)
私は、今の金融業が嫌いである。
金融業とは、産業界における「縁の下の力持ち」と考えているのに、
今、この定義に当てはまる金融業は存在するのか。
仮に存在するとしても、
「晴れた日には傘を貸し、雨の日には傘を取り上げる」ようなビジネスである。
しかし、そんな金融業でも、かわいらしく思えるようになってしまった。
それは、以下の本を読んだからである。
書名 強欲資本主義 ウォール街の自爆
著者 神谷 秀樹 文春新書
この本から、わかりやすい例を引用しましょう。
(以下、引用)
サブプライム問題の本質は、「強欲資本主義」が、
貧乏人からカネを巻き上げるために生み出したシステムであることだ。
たとえば、65歳の女性に36,000ドル、返済期間15年というローンを組ませた例があった。
融資担当者からは「毎月300ドル強支払えばいい」と説明されていたので、
この女性は15年後の80歳には完済すると思い込んでいたが、
実際、このローンは80歳になっても元本分の返済が済まないという代物だった。
また、年収20,000ドルの家政婦に、
800,000ドル(約8千万円)の一軒家を買わせた例もある。
右も左もわからない米国で、ブラジルから来た移住者が、
自分たちの通う教会の聖職者から住宅購入を勧められ、
返済不可能なローンを組んでしまった例もある。
この聖職者は、融資の斡旋で手数料を稼いでいた。
(以上、引用)
数年前、「サブプライムローンと証券化」の功績として、
「貧乏人も、マイホームを買うことができるようなったこと」が称賛されたが、
実は、このシステムは、貧乏人からカネを巻き上げるために作り出されたシステムだった。
同時に、世界から集金するシステムでもあった(証券化商品)。